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キラキラ

第30章 hungry 2


ファーストフードで、二人で並んで座った。


なんと、大野さんの奢り。
今日のお礼だって。


そんなことしてもらえるなんて思ってないし、申し訳ないから、最初は抵抗したけれど。


「これ食ってくれたら、今度、俺が櫻井の買い物に付き合ってあげるよ」

「えっ……」


なんて、ものすごい爆弾を落としてくれたから、俺は黙って大野さんがお金を払うのを見てた。

俺にもし尻尾があるならば、きっとぶんぶん振っていただろうな。

だって、俺の買い物に付き合ってくれるっていうんだぞ……。
興奮しないでいられるかっての。


大野さんは、カサカサとハンバーガーの包み紙をあけながら、眉を下げた。


「こんなんでしかお礼できなくてごめん」

「いえ!!こっちこそ気をつかわせてすみません!」

「……食わないの?」


ハンバーガーを前に、ぴっと姿勢よく座ったままの俺に、怪訝そうに大野さんが言う。



「いえ……なんか、もったいなくて食えなくて」



すっかり舞い上がって、本音を口走ると、大野さんは今度こそお腹を抱えて笑った。



「面白いな、櫻井は」

「や……そんなことは……」


冷めたらまずくなるから食え!と、叱られて、俺は、はい……と、ホカホカする包み紙に手をのばした。


店内は、夕方という時間帯もあり、家族連れは少なくて、俺たちのような学生の姿ばかり。
適度なざわめきのなか、俺は隣に座る大野さんの仕草に目を奪われっぱなしだった。

思えば一緒に何かを食べるのも初めて。

ポテトを一本ずつ口に運ぶ大野さんの口元や、ジュースを飲む姿まで優雅だと思う俺は、最早大野さんを好きすぎておかしいのかもしれない。



「おばあちゃんって……おいくつになるんですか」

「……58?9?……なんかそのへん」

「……若っ」

「ばあちゃんも母さんも、若くに子供できたんだって」

「おじいちゃんは……?」

「じいちゃんは早くに亡くなっててさ。……ばあちゃん、一人でじいちゃんとやってた喫茶店経営してんだ」

「へぇ……」

「だから……いつも手、ガッサガサで」

「あ……それで手袋?」

「うん」


大野さんはコクンと頷いた。

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