
キラキラ
第30章 hungry 2
「……いつか、ばあちゃんに櫻井を紹介したいな」
「是非」
食いぎみに言ったら、大野さんはクスクス笑った。
「ばあちゃんね、イケメン好きだから。櫻井なら、店に行ったら、きっとサービスしてくれるよ」
「おばあちゃんってどんな方なんですか?」
「豪快で、姐御みたいな人」
「……俺、勝手に縁側で穏やかにお茶飲んでるような人のイメージ持ってました(笑)」
「違うな。朝からパンケーキを山のように焼いて、近所に配っちゃうような人だよ」
……穏やかな大野さんとは、ちょっとタイプが違うみたいだ。
でも、家を飛び出した高校生男子を受け入れちゃうような人だっていうし。
きっと強くて義理人情に溢れた人なのだろうな。
「じゃあ……次に俺と出かける時、連れてってくださいね」
「ふふ……分かったよ」
肩を揺らして穏やかに笑う大野さん。
この時間が止まればいいのに、と、思いながら、俺は、コーラを勢いよく飲んだ。
時間なんてあっという間。
日が落ち、夜の帳がおりてくると、高校生が出歩くには、少々不似合いな時間となる。
一応、大野さんは受験生だし、夕飯は家でとるということにしていたせいもあり、どちらからともなく駅の方へ足を向けた。
名残惜しいけど……しょうがない。
大野さんの乗る路線まで送ると、大野さんはペコリと頭を下げた。
「今日は本当にありがとう」
「いえ……こちらこそ。ご馳走さまでした」
「……また明日な」
「はい……また明日」
手を振って改札に入って行く大野さんを、俺も手を振って見送った。
まるで、俺、彼氏じゃん、と思った。
そして、自分の思いつきに、なんだか照れてしまった。
