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キラキラ

第30章 hungry 2




しばらく黙って成り行きを見守る。

揉めているのは、森田……と二宮。
二宮が意見したことに、森田が納得できなくて反論している……といったところか。


ガンガン攻めていく森田に対し、冷静にボールをまわしてゆく二宮。

ポジション的にも、タイプ的にも、まあまあよいコンビになりそうだな、と雅紀と話していた二人だ。

ただ、うまく噛み合ったらものすごく強くなりそうだが、性格は正反対のようだから、ぶつかったらコケそうな二人でもあって……。


「偉そうにモノいってんじゃねーよ」

「別にそんなつもり……」

「俺に指図すんなっつってんだ」


声のトーンは押さえぎみだが、会話の内容は丸聞こえ。

俺は雅紀と顔を見合わせた。

この学校のバスケ部は、常にそこそこの成績をおさめている、有名校。
従って、この部に所属しているということは、みな、それぞれある程度の自信とレベルをもって入ってきた人物ばかりということに他ならない。

各中学で、キャプテンをはっていたやつらも多いはず。
当然プライドも高いやつだっているだろう。


そんな寄せ集めのチームを、ひとつにまとめていくのが、俺らの役目……とはいえ。

他の一年生たちが、固唾をのんで行方を見ているだけの様を見て。


……ったく。状況を崩すようなやつはいないのかよ?


イラッとした。


「……おい」


そのタイミングで、雅紀が見かねて声をかけた。

森田が、ふてくされたような顔をあげた。
二宮が、面白くなさそうな顔で、はい、と返事をした。


「ちょっと……二人とも外に出ろ」


俺が、顎で体育館の外をさすと、しぶしぶと二人ともコートからでてきた。
雅紀は、はぁ……と、ため息をついて、髪の毛をかきあげる。
持っていたボールを俺に手渡し、雅紀は歩いてゆく二人に目を向けた。



「俺がいく。翔ちゃん、残った一年に指示だしといて」

「大丈夫か」

「……二宮はね。森田が手強そうだけど」


ふふっと笑って歩いてゆく、雅紀の後ろ姿は頼もしい。

普段はなんちゃってキャラなのに、こういうときの、キャプテンとしての器は、誰よりもデカイと思う。


俺は、腰に手をあてて、一年生を見渡した。

まあ……一応これでも俺も副キャプテンだし。

じっと、俺を見つめる一年たちに、俺はおもむろに口を開いた。


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