
キラキラ
第30章 hungry 2
恋愛ご法度なバスケ部の主将と副主将が、そろって色恋にうつつを抜かしている、なんて洒落にもならない。
でも……。
俺はすっかり陽の落ちた夜空を見上げた。
キラキラ輝く星を見ながら、大野さんの柔らかな笑顔を思いうかべる。
顔を見るだけで、声を聞くだけで、どうしようもなく心が、落ち着かなくなる。
俺の心の一番奥深いところに、大野さんはすっかりと、入り込んでいて。
もはや、俺にとって、大野さんが、いない学校なんて、考えられないよ……
ふいに冷たい北風が、ひゅうっと吹き抜けた。
俺は、小さく、くしゅっと、くしゃみをして、ぶるりと肩を震わせた。
「さむ……」
マフラーに顎をうずめ、再び歩きだす。
人を好きになることは、とめられない。
それを制限するのは無理だと思う。
だから、ご法度なんて言われたって、なにいってんだ、バカヤローの世界だ。
二宮の気持ちだって、咎める気なんか、ない。
むしろ応援してやりたい、とさえ思う。
だけど、バスケ部に在籍している以上、なるべくそれらの想いは……せめて部活中は…表にださない努力はしないといけないだろうな……。
そして、それによって自身のレベルを落とすことのないようにしなくちゃな……と思う。
ぼんやり考えてると、ポケットのスマホがブブッと震えた気がして、開くと、送り主は。
「大野さん……」
ラインのトーク画面に、笑ってるうさぎのスタンプ。
《ばあちゃん、すごく喜んでくれた!ありがとう》
続いて、あの手袋をした、おそらくおばあちゃんの手と、大野さんのVサインをした手の写真が送られてきた。
ふふっと笑いがこみあげる。
仲いいんだね……。
俺は、かじかむ指を動かして、良かったですね!
と打ち返した。
すると、すぐに、既読がつき、ペコリとお辞儀をするスタンプが送られてきた。
先日の買い物のおかげで、大野さんと連絡先を交換したから、個人的にこんなやりとりもできるようになった。
少しずつ縮まる距離。
想いが通じるなんて思ってないけど。
せめて、大野さんの近い位置にいたい……と、願う。
俺は、幸せな気分で改札を通過しながら、もう一度くしゃみをした。
