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キラキラ

第30章 hungry 2

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松岡の口から、年明けの新人戦のスタメン発表があった。


当然、雅紀と俺はスタメン入り。
一年生では、なんと二宮が入った。

森田らも狙っていただけあって、残念そうには、していたが、森田のポジションは、雅紀とかぶるから、本人も仕方がない思いもあるだろう。

発表時、肝心の二宮は、直前の練習の接触プレーで脳震盪をおこし、保健室という騒ぎになっていたから、練習終了後、雅紀がユニフォームを持っていってやったらしく。

とっても喜んでいたよ、と雅紀は自分のことのように目を細めていた。

はいはい、ごちそうさま、なんて思ってしまうくらい、出来上がった二人の空気感に、俺は苦笑いだ。


まあ……かくいう俺も。
大野さんに報告したくちだ。

《良かったね、おめでとう!》

という、送られてきた言葉を何回繰り返して見つめたことか。

大所帯の部活ほど、スタメンを勝ち取ることは大変なことだとわかっているからこその、大野さんの言葉は、心に響く。




……そこで、考えた。

ご褒美に……大野さんの半日が欲しい、と。
受験生だけど……いいかな。ダメかな。

でも……だって、こうでもしないと会えない……。


《期末が終わったら、買い物につきあってもらえませんか》


サイズアウトしそうなバッシュを、新調したい。
それを、大野さんの意見を聞きながら選びたいんだ……。


そんな思いをこめて、思いきって送信した。


ダメだったら断るだろうし……そうさ、ダメでもともとだもの。

握っていたスマホを、机におきかけたとき、ピンポンと通知音がなって飛び上がった。



《いいよ》



「うっそ!マジで!!」


思わず心の声が漏れた。



《櫻井にあわせるから。日にち決めたら連絡ちょうだい》


やった……


「やったー!!」


自室で雄叫びをあげたら、ノックもなしにバンっとドアが開き。


「おにい、うるさい!!」


モモの冷ややかな目を浴びたのだった。


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