
キラキラ
第30章 hungry 2
バスケ部の顧問である松岡は、他の教師より文武両道を重んじる傾向がある。
よって、今回の期末で、平均点を下回るものがあったら、そいつはスタメン落ちという、わりと洒落にならない決まりごとも、バスケ部の間では常識となっていて。
それを聞いて、青ざめていたらしき二宮は、雅紀が面倒を見るっていってた。
英語がてんでダメらしい。
いや……まあ、そりゃいいけれど。
「……おまえは?今回大丈夫なのか?」
キャプテンがスタメン落ちって、笑えねーぞ?
心配になってきいてやったら、雅紀は、にっこりして試験範囲のワークを手にした。
「うん。俺、数学やばいわ。翔ちゃん助けてね」
「は?おまえ。……これ真っ白じゃん」
「わかんないもーん……なに、この三角関数って」
「いやいや、そこから?」
雅紀は決して馬鹿じゃない。
でもすごく、偏りがあって、英語や古文、歴史なんかは得意で、学年でも上位のくせに、理数関係は、からっきし、という、なんとももったいない成績をしている。
だから、試験前は何日か前から、俺がマンツーマンで解説をしてやってるのだ。
ちなみに俺は……学年トップを更新中。
「頼りにしてるよ~翔ちゃん」
「はいはい。お前、真面目にしなきゃしらねーぞ」
「分かってるって」
朗らかに笑う雅紀。
一抹の不安を感じていたら、
「昨日ね、俺んちに呼んで、二宮の英語みてやったんだけどさ……」
……なんと、やつは、ノロケ話をはじめた。
家で二人で勉強会をしただって?
もうお前らつきあってんだろ?実は!と、つっこみたくなる。
俺が、望んでもできないことを、やってる二人がうらやましい。
しかし、副主将という立場上、つきあうだの好きな人の話だのが、できないことがもどかしい。
嬉しそうに話をする雅紀は、天然炸裂。
そんな顔、他ですんなよ。
ばれるぞ、絶対に!
俺は、はいはい、と聞き流しながら、祈るしかなかった。
