
キラキラ
第30章 hungry 2
そうか、赤かぁ……
今まで、白か、グレーしか履いたことなかったから、ちょっと冒険だな。
俺は、赤のラインの入ったバッシュを握りしめて、ふと思った。
「ちなみに、大野さんは何を履いてたんですか?」
「俺?」
うーんとね~……と、言いながら、大野さんは、壁一面にディスプレイされてる、色とりどりのバッシュを見上げ、首をひねる。
転校前のバスケ強豪校で、スタメンはってた大野さん。
純粋に何を使っていたのか興味があった。
綺麗な瞳が、上から順番にさがっていく様子を、つい見つめてしまう。
考えるときのくせなのか、形のいい唇に沿わされた指が、なんとも色っぽくて、俺は一緒に壁を見上げるふりをしながら、大野さんから目が離せないでいた。
そのうち、
「あ、あれあれ」
嬉しそうに指をさす方をみると。
真っ黒に青のラインが入ったお洒落なバッシュが目に入った。
さっき、俺に勧めてくれたものとよく似てる。
「NBA選手のモデルのやつでさ、俺の学校では超流行ってたの」
そう言う大野さんは、どこか精悍な表情をしてて、俺が知らないバスケ選手の顔だった。
あのバッシュを履いて、大野さんがコートを走るところを想像する。
しなやかにボールを操り、誰もよせつけないスピードでゴール下に飛び込んでゆく。
このあいだ、3on3で、相手をしてもらったけれど、そんな大野さんと、もう一度一緒にボールを追いかけてみたい、と強く思った。
「……だから、その櫻井が持ってる赤のラインのやつは、俺のと似てるかな。……嫌?」
「そんなことは断じてありません!」
俺は、その場で、即決。
大野さんが選んでくれたもので試合にのぞんだら、絶対勝てる気がする……!
しかも、微妙にお揃いじゃん。
ちょっと、予算オーバーだったけど、かまうもんか。
「似合うよ」
……俺はきっと、大野さんに勧められたら、なんでも買ってしまう自信がある。
