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キラキラ

第30章 hungry 2



グランドで、写真を撮りあっている卒業生の輪が、少しずつ散り始めた頃を見計らい、俺は、大野さんに近づいた。

青いバラのコサージュが、大野さんの美しさを際立たせてる……なんて思うのは、惚れた欲目なのか。

談笑していた大野さんが、俺に気がつき、振り返った。


「……おめでとうございます」


ペコリと礼をしたら、大野さんは、ありがとう、と艷やかに微笑んだ。


「寂しくなります……」

「ほんと?てゆーか、相葉は?あいつ泣いてなかった?」

「……見えてたんですか?」

「退場のとき。櫻井の横にいたのが見えた(笑)」

「も、号泣ですよ」

「あははは」



二人で笑ってるところへ、その雅紀をひきずって現れたのは井ノ原先輩と岡田先輩。


頭をクチャクチャにされて手荒に扱われても、雅紀は嬉しそうにしている。

お前、井ノ原先輩のこと、ほんとにリスペクトしてたもんな。

こんなやり取りも最後かと思うと、微笑ましい。



「ちょ……先輩!ギブギブ!」

「ああ?こんくらいで何いってんだ」


なぜだかプロレス技をかけ始めた井ノ原先輩に、雅紀が悲鳴をあげている。


岡田先輩が、しょーがねーな。という顔をしながら、俺の肩をポンポンと叩いた。


「バスケ部……まかせたぞ。櫻葉」

「はい……」


岡田先輩は、他県の私立大学に進学が決まってるそうだ。
それ故、会うことも、なくなっていってしまうだろう。

しょうがないけれど、やはり寂しいな。


「……こっちに帰ってきたときは、顔出してくださいね」

「おお、また こないだのメンツで3on3 でもやるか」

「……」


数ヶ月前にやったお遊び。
あのときは、井ノ原先輩、岡田先輩、大野さんにコテンパンにされたっけ。

隣で黙って聞いてる大野さんが、そのときの楽しさを思い出したのか、ふふっと笑った。


「……そのときは、メンバーシャッフルしましょ。先輩ら三人だと強すぎて。完全なワンサイドですもん」

「ははっ……そーか。んじゃ、大野と二宮、同じポジションだから、トレードするか」

「……はい、それなら!」


きっと、岡田先輩はなにも考えずに言った言葉。

でも、俺は思わず大きく頷いてた。

大野さんと一緒にプレー。

してみたい。
是非してみたい!

大野さんが、そんな俺をみて、ふにゃりと笑った。

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