
キラキラ
第30章 hungry 2
なんだか別れがたくて、グランドでそのまま話し込んでいたが、
「名残惜しいだろうが、そろそろ帰れよー」
という教師の言葉をうけ、あちこち残っていたグループも、それぞれ、学校を出た。
「どーする?みんなで最後にカラオケにでも行くか?」
一度帰ったら、遅くなるしなぁ……と、井ノ原先輩が、スマホをいじりながら、このあとの予定をたてはじめる。
「えー……俺、ファミレスでいいや」
岡田先輩が、マフラーに口元をうずめて寒そうに肩をすくめた。
岡田先輩は、歌上手いくせに、あまり披露したがらないんだよね。
「あ……じゃあさ、美味しいカフェオレいれてくれるとこあるんだけど行かない?」
同じくスマホをいじってる大野さんが、口を挟み、顔をあげて俺らを見渡した。
ヨシノさんのとこかな……?
俺の表情で分かったのか、大野さんが、にこっと笑った。
俺が、そっと頷くと、大野さんは、嬉しそうに、頷きかえす。
「卒業式終わったら、よかったらランチ食べにいらっしゃいって、言われてたんだけどさ……みんなが嫌じゃなければだけど」
「え……どこ?」
遠いとこは嫌だぜー、と注文をつける岡田先輩に、大野さんは、近いよ、ここから一駅だもん、と付け加えた。
「俺のばーちゃんち。喫茶店やってんの」
「へぇ~!行こうぜ行こうぜ」
井ノ原先輩が、目を輝かせ、勢いをつけて俺らの肩を抱いて歩き出す。
「ん、じゃあ、連絡しとくね」
大野さんが、スマホを操作して耳にあてるのをみて、雅紀がポケットから、自分のスマホを取り出しながら、手をあげた。
「えと……大野さん、二宮も呼んでいいですか」
「うん。いーよ」
「あいつも来たいはず……」
言いながら、手早くLINEをうつ雅紀。
同じく卒業式には出席していたものの、二宮ら一年生とは、途中から別行動だったから。
みんなで、先輩方の門出を祝おう。
