
キラキラ
第30章 hungry 2
「やだ、さとちゃんのお友だちって、どうしてこうもイケメンぞろいなの!?」
ヨシノさんが嬉しそうに、ミックスジュースをだしてくれながら、大きな口をほころばせた。
カウンター越しに、大野さんが、しーっと指をたてて、苦笑う。
その仕草がおかしくて、運ぶのを手伝いに来た俺は、クスクス笑った。
ヨシノさんが、リザーブしといてくれた店の奥のソファー席に、陣取った男子高校生。
雅紀と二宮。
井ノ原先輩と岡田先輩。
まあタイプは違うが、それぞれ確かに整った顔をしてるよな。
若いっていいわねぇ……と呟いて、ヨシノさんは、何度も首をのばして奥の席を見て、俺らの笑いを誘う。
「ヨ……ヨシノちゃん落ち着いてね?」
「やあだ。落ち着いてるわよ。今日のランチは、キッシュだからね」
ピザも焼いてるから、後で持っていくわ、とヨシノさんは、のんびりした口調とは裏腹に、てきぱきとランチプレートを作っていく。
大野さんが、ふと思い出したように、呟いた。
「ヨシノちゃんのオレンジゼリーも食べたいなぁ……」
「ああ、それはもちろん準備済み。少し多めにつくっといてよかった」
「ほんと?!」
ほんとよ、と可愛らしくウインクするヨシノさん。
あのゼリーは、超美味しかったから、俺も嬉しくて、やった、と声がでてしまう。
「はい、翔ちゃん。おとさないようにね」
「……気をつけます」
トレーを渡される。
何度も通ってるうちに、ヨシノさんから、翔ちゃんと呼ばれてる俺だが、まだちょっと気恥ずかしい。
他の客の邪魔にならないように、大野さんと一緒にプレートとジュースを運んだ。
すると真剣な顔をして、頭をつきあわせていた四人が、おそるおそる、といった具合に、大野さんを見上げた。
「なに?」
井ノ原先輩が、後方にちらりと目をやり、嘘だろ?という顔をする。
「なあ……あの人ほんとに大野のおばあちゃん?」
「……うん」
「大野の、おばあちゃん?!」
「だから、そうだって」
俺が、ヨシノさんに会った初日に大野さんとやり取りした会話を、四人が再現してる。
ぷっと吹き出してしまった。
だよね、だよね!
「すんげー綺麗なんだけど!」
「言ってあげて。喜ぶから」
嬉しそうな大野さん。
その微笑みが可愛らしくて、思わず見惚れてしまったのは内緒だ。
