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キラキラ

第30章 hungry 2


キッシュをたいらげ、ピザをたいらげ、ゼリーまで綺麗にたいらげ、カフェオレ片手に、昔話や、バスケの話をしていると、時間がたつのはあっという間。

時計を見れば四時をまわろうか、というタイミングでお開きにすることにした。

帰ることをヨシノさんに知らせようと、カウンターに目をやれば……見たことのある長身。

げ!と、思わず声に出しそうになり、慌てて口をおさえた。

俺は隣の席でふにゃふにゃ笑ってる大野さんの腕を、くいくい引っ張り声を潜めた。



「お……おーのさん!今日って……ライブあるんですか?」

「……え?知らないよ……?」


首をのばしてカウンターを見て、大野さんはふわりと微笑んだ。


「マサさんじゃん。俺、ちょっと挨拶してくる。櫻井も行こう」

「え……いや、俺は」

「……ごめんみんな。ちょっとお客さんに挨拶してくるね」


大野さんが四人に声をかけたけど、おう、と返事をするみんなは、気がついてない。

一瞬ためらったけど、今のうちに、この状況を坂本先生に伝えなくちゃ、と、俺も席を立った。





この店で会うのはあの日以来。

「マサさん。こんにちは」

大野さんが声をかけると、ヨシノさんと話をしていた先生は、体を起こしてこちらに視線を投げた。


「おう……大野くんと………櫻井。久しぶり」


つい最近、音楽室に出向いた俺は、全然久しぶりでもなんでもなかったけど、大野さんにあわせて、ペコッと頭を下げた。

こないだも思ったけど、プライベートの坂本先生は、いつもの三枚目の顔を完全に消してる。

服装も雰囲気も違うから、パット見は分からないかも……。

とにかく、雅紀たちにバレないうちに、なんとかしなくちゃ。


先生は、俺たちが制服なのをみて、不思議そうな顔をした。


「?学校帰りなのか?」

「卒業式だったんです」

「大野くんが?」

「はい」

「……そうか。おめでとう」



先生が言いながら、少し怪訝な顔をした。


気づいたかな?
先生!大野さん、俺らの学校の生徒だよ!


俺は、目で訴えた。



「今日ライブあるんですか?」

「……ああ。六時からな」


先生に少しでも、何か伝えなくちゃ、と考えながら喋っていたら、俺の真後ろから、


「すみません。テーブルふくものお借りできますか」


二宮の声がして、飛び上がった。

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