
キラキラ
第30章 hungry 2
結局、少し早く到着した長野さんにも急遽お願いをし、ライブの一発目の曲に、俺らへの応援歌なるものを歌ってくれた坂本先生。
これはひとえに、ヨシノさんというオーナーの権限をフルに利用したもので。
……先生らにとってはムチャ振りされたといっても過言ではない。
だけど、あの場をソッコー収めるには、坂本先生の、了解の意思表示しかなかったし、何よりヨシノさんに、あんなチャーミングに、お願いなんてされたら、嫌とはいえないよな。
「いいか。お前らぜっっったいに言うなよ」
ライブ終了後。
真剣な顔をして念押しする先生が面白くて、俺らはゲラゲラ笑った。
「わかってますって!」
「俺らより相葉たち現役に口止めしとかないと」
先輩が口々にいうなかで、雅紀と二宮は、困ったように顔を見合わせてた。
そんな俺らのやりとりを楽しそうに見守ってるヨシノさんは、まじまじと坂本先生をみて、感心したように、へぇーってため息をついてる。
「知らなかった。マサくんって、高校教師だったんだ」
「ヨシノさん……どうかどうか口外しないでくださいね」
情けない顔で坂本先生が訴えるのを、ヨシノさんは、無邪気に、なんでー?とか言ってる。
「いろいろうるさいんです……外野が」
「ふーん……大変ね。ヒロシくんも先生なの?」
「いえ、俺は一般企業の会社員なんで……」
「でもこゆことしてるのは、内緒なの?」
「まあ……言ってはないです」
「そういうものなの?」
「そういうものでしょうね」
立場の弱そうな坂本先生が面白くて、俺がくすくす笑ってると、大野さんが、複雑な顔をして俺の傍にたった。
「櫻井は知ってたの?マサさんが俺らの学校の先生だって」
「…はい」
「どうして言ってくれなかったの?」
あれ。
怒ってんのかな……。
「……三年の大野さんは、先生と接点ないし、卒業までの期間考えたら、会わないだろうと思ったし」
「……うん」
「それなら、大野さんも先生も、知らないままの方が、店で会ってもお互い自然体でいられるかなって思って……」
「……」
「だいたい、大野さんって隠し事できなさそうですもん」
大野さんが、ムッとして俺を見た。
