
キラキラ
第30章 hungry 2
そのままキュッと手を握る。
……恋人つなぎって知ってる?大野さん。
心で問いかけた。
男女問わず……いや、このことに関してもいつかつっこまないといけないとこだけど……何人かとつきあったことがあるんなら、手くらい握ったりしてるかな。
それとも握られたんだろうか……。
じっと、大野さんを見つめた。
大野さんの潤んだ瞳が、俺を捉える。
何かを言いたそうだけど、言えない、そんな顔。
……こんな初々しい反応をされると、俺が初めての男なんじゃないの?と、誤解しちゃうじゃん……。
指を絡めたところが、じんわり温かくなってきた。
そのとき、大野さんに、ギュッと握り返されたような感覚がして。
「……」
「……」
俺は舞い上がりそうな心を押さえながら、もう一度力をこめて手を握り。
しばらく黙ってゆっくりと歩いた。
照れくさいのもあるけれど、なんだか沈黙が心地いい。
恋人同士みたいなことをするたびに、ドキドキする。
住宅街なので、特別人通りが多いわけじゃない。
ちょっと密着気味に歩けば、手を繋いでるかどうかなんて、パッと見、分からないから、たまに通りゆく人たちにも臆することもなく、歩いた。
……この坂道をくだったら、駅というところで、ふと立ち止まった。
大野さんが、また俺を見上げた。
その目が、俺にはどうみても誘ってるようにしかみえなくて。
腐っていると、言わば言え。
大野さんの、その少しあいた唇が、寒さで紅潮した頬が、潤んだ瞳が俺の理性を揺さぶってくる。
キスしたいって、思った。
……だけど、いざってときに拒否されるのも嫌だから、
「……大野さん」
小さな声で問いかけた。
「……ん?」
「……キスが……したいです」
大野さんの目が一瞬見開かれたあと、ギュッと細められ、その口元が弧を描く。
「宣言する……?そんなこと」
「だ……だって、拒否られたら俺ショックですもん……!」
「……拒否なんてしないよ」
大野さんはクスクス笑いながら、何気にすごいことを言った。
「いーよ、俺もしたい」
大野さんは、目を閉じ、ん、と顔をつきだした。
