キラキラ
第30章 hungry 2
「大野さん……」
小さく呼び掛けて、抱きしめる腕を強めたら、大野さんの両手がそっと俺の背中に添わされた。
そんな反応のひとつひとつが嬉しくてたまらない。
俺の想いに応えてくれてるのがわかるから。
一方通行じゃないことがわかるから。
この腕のなかにいる人を、心から大事に思う。
「俺……あなたとずっとずっと一緒にいたいです」
「……うん」
「ずっとずっと隣にいたい」
「……うん」
「……あなたもそう思ってくれてます?」
聞くと、大野さんは、んふっと笑って俺を見上げた。
「俺は、とっくにそのつもりなんだけど……信じてくれてないの?」
「いや……夢みたいでなかなか……」
ゴニョゴニョと言ってると、大野さんは、いいことを思い付いたというように、
「そうだ」
と、目を輝かせた。
……そんな仕草はヨシノさんそっくりだ。
「あのさ、俺も卒業したしさ、もうちょっと恋人っぽくしよっか?」
「……え?」
「……俺のこと、名前で呼んでよ」
…………え。
「えええっ!」
「……そんな驚かなくても」
体を離しながら、大野さんはクスリと笑って、首を傾げた。
いや。だって……だって……名前!?
オオノサトシ……智??
「恐れ多くて……呼べません……」
俺が小刻みに首を振ると、大野さんは、小悪魔のような顔で、ニヤッとした。
「俺のこと名前で呼んでくれたら、俺も櫻井を名前で呼んだげる」
…………ズルい……。
そんなん、大野さんに名前で呼ばれたら、俺……嬉しくて死んじゃう。
……どうしよ。呼んでほしい。
でも智?
呼び捨て?
「あとさ、敬語も禁止ね」
大野さんは楽しそうにいろいろ条件を出してくる。