キラキラ
第30章 hungry 2
くそーっ。
大野さんってば、俺の反応見て面白がってるに違いない。
いくら憧れの人でも、こんだけ遊ばれたら、ちょっとだけやり返しちゃうぞ、という気になってきた。
うふふと笑ってる大野さんを、逆に驚かせるために、俺は頭を切り替え、肝を据えて、大野さんの耳元に顔を寄せた。
「……愛してる、智」
照れるのを我慢して決死の覚悟で小さく囁いた。
……くさいかな。やっぱ。
ゆっくり体をおこしたら、
「…………」
あれ。
大野さんがゆでダコのような顔で、俺を見ていた。
その反応に逆にびっくりする。
「あ……の……?」
「バカなの? 急に言うな、そんなこと」
照れ隠しなのか、早口でまくしたてた大野さんは、真っ赤な顔をふせ、じゃあねっと叫ぶように言って、踵を返して走り去っていった。
後に残ったのは、唖然とした顔の俺。
思いのほか、このイタズラきいたんだろか……?
俺は、つられて赤くなっているであろう自分の頬を触りながら、改札を通った。
所謂バカップルみたいなこと……しちゃったな。
俺は、気を抜くとにんまりしてしまいそうな顔を、叱咤しながら、ホームを歩いた。
次は……ナチュラルに「智」って呼んでみよう、と心に決めながら。