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キラキラ

第30章 hungry 2

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「せんせー、おなかがいたいです」


いつものように、棒読みで理由を述べた俺は、保健室に入室後、そのまま真っ直ぐにベッドに向かい、当然のように潜り込んだ。

デスクに向かっていた松潤が、ゆっくりと振り返って、「ったくお前は……」と、苦笑いしたのが分かった。


「おい」

「……なんだよ」


俺は、返事をしながら、布団を引き上げる。
すると、歩いてきた松潤が、その布団をペロンとめくった。


「……なんだよ、じゃねーわ。なんか、俺にいうことはないのか」


ニヤニヤしながら問いかけてくるから、俺は、なんだか恥ずかしくなって、ふいとそっぽを向いた。


あの日。
……智が、合格報告に学校にきた日。

松潤が席をはずしてお膳立てしてくれたおかげで、俺は、腹をくくって、智ときちんと話をすることができた。


そして……心が通じあうことができたんだ。


はなから智にフラれたと決めつけて、この恋をあきらめようとしてた俺を、鼓舞してくれた松潤には、感謝してもしきれない。


…まあ…あのあと、きちんと御礼も言えてなかったし、経過報告もしてなかったし。


だから、今日は、もともとそのつもりで授業をサボってきたんだけど。


……いざとなると、照れくさくて切り出せないものだ。


視線をそらせたままぐずぐずしてると、松潤が白衣のポケットに手をいれたまま、俺を覗きこんだ。

思わぬ至近距離に、びくっとして思わず松潤と目が合う。

松潤は、ニヤリと笑って、その大きな瞳を輝かせた。



「……あれからうまくいってんの?」

「……うん」

「へぇ……良かったじゃねーか」



松潤が、優しく表情を柔らげた。


「いろいろと……ありがとうございました」


ぽそっと礼を言うと、松潤は、ふふんと笑って、


「大野はあれで結構な天然だから、おまえみたいな優等生とは、うまくやっていけるだろうな」


と、言った。
俺は、ちらりとそんな松潤を見上げて、うんと、頷く。
松潤は、片手で顎をさわりながら、考えるような仕草で呟いた。


「あとは……あれだな。ナニの時だな」

「……ナニ?」


俺がきょとんとすると、松潤は悪そうな顔になり、ぽんぽんと俺の尻を叩いた。


「どっちが突っ込むのか知らねぇが、男同士は準備をきちんとしないと、できないからな?」

「!!」

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