キラキラ
第31章 イチオクノ愛
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…………
なんだか、遠くで声がする。
それが、とても心地いい響きを持っていて、聞いていて気持ちいい。
柔らかで、穏やかで……
「相葉さん、今日は何食べたい?」
突如、はっきりと耳にとびこんできた、大事な恋人の声。
……にのちゃんだ!
打ち合わせ終わったんだ!と、俺はパチリと目を開けて飛び起きた。
「……?」
瞬間、強烈な違和感を感じた。
飛び起きた、と思った体は、意に反して思うように動かない。
何より視界にうつる世界が真っ暗で。
…………え?
「にの?」
と、言ったつもり、だった
いつものような発音ができなくて、かわりに変なくぐもった鳴き声が、でた。
体が思うように動かなくて……というより、何かが覆い被さってる感じ。
重たっ……!
反射的に体をよじり、その覆い被さってるものの下からぬけ出ると。
………………。
……え?
俺は、目にとびこんできた風景に唖然としてしまった。
やたらふかふだと思っていた地面……はソファだろうか?
さらに、俺が下敷きになっていたと、思われる、バカみたいに大きな雑誌が目の前に。
そう。
まるで、某アニメのように、ライトを照らせば全てがでっかくなりました、的な、嘘みたいな現象がおきてる。
……なにこれ。
……こんなの映画でしかみたことねーよ……。
蟻の目線とか、おもちゃのフィギュアの目線とかで見た映像を思いだし、まんまそれがリアルに目の前にあることに引いた。
いつも過ごしてる世界が大きくなる。
いや、違う。
まわりがでっかくなるんじゃなくて。
あれらは主人公が小さい設定。
その時。
「あれ……おまえ、どこの子?」
よく知る柔らかな声と、温かい手に一瞬気をとられたと思ったら、ゆっくりと自分の体が持ち上がって。
鼻先が、つきそうな近い位置に、大事な大事な人が、優しい微笑みを浮かべていた。
ただし、それは俺が抱き締めているサイズの、いつものにのではなく。
それはそれは、でっかいでっかいにの、だった。
「かわいいな、おまえ」