キラキラ
第31章 イチオクノ愛
「あれ?子犬?……おかしーな。今日は猫ちゃん特集だったはずだったんですけどねー?」
今日の収録の片付けをしていた馴染みのADの若い男の子が、怪訝な顔をして俺を受け取ろうとするから、俺は、いやだ!とにのにしがみついた。
嫌だ、絶対!
この状況で知らない場所に連れて行かれたら、俺、死んじゃうよ!
意地でもにのから離れまいと、全身に力をこめて、にのにくっつく。
「あれ。嫌がってる(笑)」
そんな俺の仕草にくすっと笑ったにのは、
……あぅっ
力ずくでべりっと俺をひっぺがした。
くそぅ……人間様はやっぱり力が強い。
たとえ、小学生なみの筋肉のにのであっても、だ。
呆然とした俺の体は、そのままADくんの腕の中へ。
「じゃあ、よろしくね」
「はい!相葉さん二宮さん、お疲れ様っす!」
ADの腕にがっつり抱えられてるものだから、俺がどんなに嫌がって暴れても、身動きひとつとれない。
にのっ!にのっ!!待って!!
と、必死に叫んでみても、
「キャンっ!キャンっ!」
とう吠える声に変換されて。
俺の頭をいとおしそうに撫でてから、にのは背を向け、俺のドッペルゲンガーと歩いていった。
そいつ、俺じゃないのに!!
楽しそうに微笑みあう二人を見送るって……悪夢以外のなにものでもないわ。
マジかよ……
夢なら早く覚めて欲しいけど、妙にリアルな感じが気味悪い。
これ、後日、ホラー体験として、仕事のオファーもらえるかも……なんて一瞬だけ呑気なことを考えてしまった。
ていうか、早いとこなんとかしないと……。
何をしたらいいか分からないけれど、とりあえず、ADくんにケージに入れられたらおしまいだ。
俺は、あーん、と大きな口をあけて。
「いって!!!」
ADくんの腕をおもっくそ噛んだ。
腕がゆるんだすきに床に飛び下り、一目散に逃げた。
「あ!こら待て!!」
ごめん!ADくん!
でも、閉じ込められて帰れなくなる方が困るんだ!
俺は、ハイハイの要領で、短い手足を懸命に交互に動かして、倉庫から飛び出した。
にのっ!!
俺を連れて帰って?!