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キラキラ

第31章 イチオクノ愛


マシンの音を聞きながら、……俺は我に返る。


と……とりあえず、動物に好かれない松潤じゃなくて、翔ちゃんを狙おうか……。

俺は、とことこ、と、翔ちゃんの足元に向かった。
有名ブランドのロゴが入った翔ちゃん愛用のサンダルを、前足で、ふみふみと触ると、ん?と翔ちゃんが視線をさげた。

そして、俺を見て。


「……犬ぅ?!」


と、予想外にでっかい声で、驚いた。


「なに、どしたの」


松潤が、何事かと真剣な顔で飛んできた。
そして、すぐに俺に気がつく。


「え……なんでこんなとこに犬?」

「わかんねー。今、俺の足元に突然あらわれた!」


意外とびびりな翔ちゃんは、気味が悪いといった目で俺を見つめる。

……こりゃ、松潤の方が見込みあるかな……と、思った俺は、さっさと翔ちゃんから松潤に乗り換えた。

松潤はしゃがんで、俺の頭をくしゅくしゅと触ってくる。
それが気持ちよくて、俺は松潤の指にすり寄った。


「子犬じゃん……これ柴犬?」

「どっかから逃げてきたのかなぁ」


松潤の様子を見て、翔ちゃんがおそるおそるといった感じで、松潤の隣にしゃがんだ。

俺は二人を見上げて、クゥンと喉を鳴らした。
そうして全力で訴えた。


腹へった!腹へった!
なんかちょーだい!!



「あはっ……可愛いね」

「だな」



……伝わらねー!!


脱力しそうになりながら、俺は松潤の足元に頭をすり寄せた。
松潤が、俺を抱き上げた。

ふわりと彼の香水の香りがして、なんだか……不思議。
俺、メンバーに抱っこされてる。
彼の大きな手のひらが、俺の体を優しく撫でるのが、すごく温かくて気持ちいい。



「どうしよ。警備室かどっかに連れてく?」

「それか、動物番組で預かってた子犬とかじゃねーの?マネージャーに託そうか」


二人は、俺をどこかにつれて行く相談を始めた。

まあそれが普通の選択ではあるんだろーけどさ。


ダメダメダメ。
せっかくメンバーに会えたのに!
やめてよ。
俺、絶対ここから動かないぞ!


俺がクゥンクゥンと鼻を鳴らしたと同時に、「おはよう」と、待ちかねた声がした。

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