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キラキラ

第31章 イチオクノ愛


「……大丈夫か……?おまえ……」


サンドイッチにがっつく柴犬という図はあまりないはずだ。
とんでもない雑食ぶりに苦笑しながら、にのが体を撫でてくれる。


大丈夫。ノープロブレムだよ!


胃が子犬仕様だから、サンドイッチひとつで腹一杯だけどね。

げふっとげっぷをした俺は、おもむろに、にのの
足元に歩み寄り、くるんとした瞳で抱っこしてオーラをだしてみた。

すると、にのがひきあげるように俺を持ち上げて膝の上においてくれる。

さすが、にの!
以心伝心。


「不思議だな。なんか、おまえの思ってることが分かるわ」


ぽつりといい、優しく体を撫でてくれる手つきにうっとりしていると、次第に眠たくなってきた。



昨日、ほとんど寝てなかったもんなぁ……。


にのの温もりと匂いに安心しきった俺は、そのままうつらうつらと目を閉じた。


そのあと、にのに、「行ってくるね」、と頭を撫でられたのが分かって、寝ぼけ眼でクゥンと返事をした。

収録に行くんだな、と思った。
俺、ここで、よいこで待ってるね。





誰かに再び抱っこされてる感覚に、ぼんやりと、目をあけた。

顔をなでる風。
ざわざわした車の音。


…………?

楽屋……?違う。

……え!?


外だということに気づき、一気に覚醒する。


慌てて視線をあげたら、そこにはよーく知った顔。
毎日毎日鏡でみてきた俺の顔がある。
マスクをしてはいるけれども。
顎のラインから見上げるそれはまぎれもなく俺。


……は?!


状況がつかめなくて、俺は、手で、偽相葉の胸をひっかいた。


なんで、俺がおまえに抱っこされてんの?!


すると偽相葉は、視線をちらりとおとし、ふふっと目だけで微笑んだ。

瞬間、俺は、背筋が寒くなった。

その目は、俺が誰か知ってる、という目であった。

そして、


「ごめんね。まだあんたに邪魔されたくないんだ」


偽相葉は、マスク越しに、のんびりとそう俺に話しかけた。

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