キラキラ
第31章 イチオクノ愛
離せ!
どこ連れていく気だ?!
グルルルと、威嚇した唸り声をあげても、偽相葉は、しれっとした顔で、黙れとばかりに、俺をぎゅうっと抱き締め直した。
顔を胸に押しつけられて抱き込まれてるから、くぐもった声しか出ない。
マスクをしていたって、出してる芸能人オーラに、行き交う人々はすぐに気がつくだろう。
そのせいか、偽相葉は、足早にテレビ局の裏手の道にでて、ちょっとキョロキョロしたかと思うと、路上に停まってる自転車のかごに俺をほおりこんだ。
うわっ……
弾かれるように見上げたら、偽相葉は、底冷えするような冷ややかな視線で、
「可愛く鳴いてたら、誰か拾ってくれるよ」
一言言い、大きなストライドで元来た道を帰っていった。
キャンキャンキャン!!
慌てて大きな声で鳴いてみるが、たまたま人がいない時間帯なのか、往来する車はあれど、歩行者はいないため、誰にも気づかれることはなく。
ひとしきり騒ぎ倒し……鳴き疲れて。
俺はしゅん、とかごのなかに座り込んだ。
マジかよ……
悪夢以外の何物でもない。
テレビ局から出されたことは何を意味するか。
ほぼ100パーセントあの建物に入ることは叶わないということ。
厳重なセキュリティをくぐりぬけて、建物に入り、あの楽屋に入ることはもはや不可能だった。
ということは、イコール、もうにのに会えないということだ。
もちろん、他のメンバーにも会えない。
会う術がない。
……冗談じゃない!!
真っ白になりかけた頭を無理矢理振って、自分を奮い立たせた。
何でか、犬になってて。
何でか、追い出されて。
ひとりぼっちだなんて、マジで冗談じゃない。
俺はとりあえず、なんとか、この自転車のかごから出れやしないかと、かごに足をかけてよじ登ってみた。