キラキラ
第31章 イチオクノ愛
「綺麗になったよー」
タオルで拭きあげてもらい、リーダーの腕からリビングにおろされた俺は、トコトコ歩いて、キッチンで、包丁片手になにやら刻んでいる松兄の足元にすりよった。
部屋にいれてくれてありがと。松兄。
松兄は、じっと黙って探るように俺を見下ろしてる。
ちょっと迷惑……そんな目。
……だよね。
普通なら、なんの義理もない犬っころを、自分の部屋になんてあげたくないよね。
めんどくさいし。
リーダーのお願いだから、しぶしぶきいてくれたの分かってるんだ。
ね、言葉で伝わらないなら、せめて態度でしめすよ。
騒がないし鳴かないよ、俺。
足元に座り、その端正な顔をじーっと見上げると、俺と目をあわせた松兄は片頬をあげて、仕方ないなというように、笑んだ。
「うるさくしたらつまみ出すからな」
……精一杯の譲歩の言葉だね。
うん。ありがと。
俺がこくりと頷いたら、松兄は、目を丸くしてそれから大きな口をあけて笑った。
「すげっ……こいつ言葉分かるのかよ」
「どーしたの?」
ペットボトルのふたをあけながら、リーダーがのんびり振り返った。
「あーいや。お前がこいつを気に入ったわけがちょっとわかったっつーか」
「別に気に入ったわけじゃないよ。ほっとけなかっただけ」
ねー、と、リーダーは、しゃがんで俺の頭をよしよし、と撫でた。
部屋着に着替えたそんなリーダーは、タオルを首にかけて、くつろぎ体勢バッチリ。
前髪から、ポトポトとおちる水滴を無造作にかきあげてるそんな素のリーダーは、ちょっぴり色っぽくみえる。
それにしても。
……可愛がってもらってる後輩の立ち位置の俺でも、松兄んちの風呂になんか入ったことないのに。
やっぱ、リーダーは古いし、松兄と舞台したりして、付き合いも長いし、俺たちとは先輩後輩の枠がそもそも違うんだなー。
なんて、このときはそんな風に思っていた。