キラキラ
第31章 イチオクノ愛
「……こいつ、今頷いたよな」
松兄が、また驚いた顔で俺を見た。
リーダーは、笑って、そお?とのほほんと言った。
「……なんか、すごく賢い犬だよね」
「そーゆー問題じゃないとおもうんだが……」
言いながら、ま、いーか、とつぶやき、松兄は、ちゃちゃっと二つのお皿に肉をもりつけた。
さらに、小さな紙皿には、細かく切った肉をのせて、俺の前に、ほらよ、と置いてくれた。
「子犬がこんなもん食っていいのかわかんねーけど、ま、腹こわすなよ」
松兄は、にっと笑って俺の頭を大きな手でポンポンとしたから、俺もまたこっくり頷いて、お皿に口をつけた。
松兄のご飯なんて、絶対美味しいに決まってる!
柔らかな肉をそっと口にいれた。
味をつける前の肉をよけてくれていたみたいで、ガッツリ系が好きな俺には、少し味気なかったけど、ほのかにあたたかなそれは、ハムサンド以来の食事で、なんだか胸がいっぱいになった。
……なんだかんだで、やっぱり優しい人たちだよね。
俺はそれから夢中で、ガツガツ食べて、お皿まで綺麗に綺麗に舐めた。
うーん……我ながら犬が板についてきて、怖い。
ふと見上げれば、目の前のテーブルで、談笑しながら、ビールを飲んで食事をする二人。
アルコールがあまり強くないリーダーが飲んでるということは、今日はこのまま泊まるんだな、と思った。
いや、それよりさ…リーダーってお泊まりするんだ?
なんか、ますます親密な二人……。
ぼんやりとふたりを見つめてると、そのうち、あろうことか、眠たくなってきた。
……そりゃそうか。
あまり眠れなかった昨夜から始まり、自転車のかごから脱出したり、駐車場を走り回ったり、体の大きさのわりには、俺、そーとーな運動量をこなしてるはずだもん。
分析しながら、とろとろとまぶたがおちる。
食って、すぐ寝るってマジで動物……と思うと、ちょっと恐いけど、まあ、実際犬だからしょうがない。
俺は、コロンと寝そべり、目を閉じた。
昨夜以来の安心した場所で、眠れることが、純粋に嬉しかった。