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影に抱かれて

第16章 善か、悪か

愛とはなんと恐ろしいものなのだろう。

そして、実の両親よりも自分の方が大切だと言ってくれたジュールの真剣な瞳を思い出し……喜びさえ感じてしまう自分の罪深さにリュヌの心は乱れていた。

そもそも、色々なことを一度に知りすぎたのだ。

ジュールが実の両親を殺害し……そして自分の母親は生きていて、ジュールはその母親を凌辱していた。しかもジュールは自分の実の兄であり、愛を捧げた唯一の人であり……更には自分にフランクール家の当主になるようにとジャンは言う。

リュヌは波間で揺れる木の葉のように揺れていた。

「こちらに来なさい……お前に会わせておきたい人がいるんじゃ」

こんな時に誰と……?
ジャンと二人きりだと思っていたのに。

不思議に思いながらジャンの後に続き、隣室に足を踏み入れるとそこには……あのブロンドの女性、いや……

母親のイネスがベッドの隅に腰掛けていた。

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