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第2章 Warp A×N
和也が来た合図が、
家の中に響き渡る。
心臓が大きく、どくんと跳ねた。
こんなに緊張するのはいつ以来だろう。
どんな顔をして迎えればいいか、
ハンバーグを作りながらずっと考えてた。
でも答えは出なかった。
覚悟を決めて、玄関へと向かう。
ドアを開けた先には、
3年ぶりに見る顔。
「いらっしゃい…。」
「うん。ありがとう。」
3年も経ってるのに、和也は変わっていない。
ふわふわ揺れる猫っ毛も。
少し大きめのサイズの服を着ることも。
年季の入ったスニーカーを履いてるとこも。
華奢な体つきも。
ものすごい猫背だってところも…。
3年ぶりなのに、何も変わっていない。
少し長めの髪は初めて見たけど、
それでも昔と変わらない。
ああ、やっぱり好きなんだ。俺。
心臓がうるさいのは緊張だけじゃない。
「取り合えず、上がってよ。」
「あ、うん。」
よかった…。ここで断られたら
どうしようかと思ってた。
作ったハンバーグも水の泡だ。
俺の少しあとを、てくてく付いてくる。
「…何も変わってないんだね。」
和也が俺の部屋を見渡しながら言ってる。
「俺以外、誰も家に入らないし、
模様替えもしてないからかな。」
そう言うと、そうなんだってぼそっと呟く。
その顔は心なしか嬉しそうで。
ねぇ…。やっぱりそういうことなのかな。