テキストサイズ

STORIES

第2章 Warp A×N





何を言われるか、ドキドキしてた。

何の用で和也がここにきたのか、
分からなかったから。


「どうしたの?」


2人とも座って、お茶も出して
落ち着いた頃。

俺の方から切り出した。


俺の言葉に、一瞬びくっと
体を震わせた和也。

まずい、声がきつくなったかもしれない。

でもそうしないと、震えてるのが
バレそうだったから…。


覚悟を決めたように、きゅっと
唇を噛んだ和也が俺を見る。


「CD、忘れたから…。」
「…え?CD?」

思わず聞き返してしまった。

CD…?


「あ…。」

思い当たる節があった。

唯一、和也が残していったもの。
忘れていったものが、CDだった。


近くの本棚をごそごそと漁れば、
1枚のCDアルバムが出てくる。


「これのこと?」
「あ、うん。これ。」


ありがとうって俺の手からCDを取ろうとする。

離そうとして、直前で考える。


この手を離しちゃったら、
もう和也は帰っちゃうの?

もう会うこともないの?

せっかく来たチャンスなのに、
それだけは嫌だ。


離れていく手を、俺からぎゅっと握った。


「あ…、え?」


困惑している声がする。

とにかく俺は必死だった。


「あ、ごめん。」

握っていた手をぱっと離した。
自分から離した。


あの時とおなじだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ