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第4章 可愛いアイツと N×A
「ねぇ、雅紀。」
「…ん?」
「俺、お風呂に入ってくるから
もうちょっとだけ待っててくれる?」
今出来る、飛びきり甘い声を、
雅紀の耳元で囁いてみる。
すると、
「え!?」
いきなりばっと顔を上げるもんだから、
俺の方が驚いてしまう。
だって、そんなにあからさまに
嬉しそうな反応されたら…ね。
「急いで入ってくるから。」
「うん!」
「タオルケットでも掛けてなよ?」
「そうするね!」
鼻歌が聞こえてきそうなほど、
るんるんしてる雅紀。
これなら初めからこういえばよかった。
雅紀の明日のことを考えるのも大事だけど、
今の俺たちにそれ以上に必要だったのは
一緒にいるってことだったかもね…。
いつもはもうちょっと長く入るお風呂も、
今日はシャワーだけにした。
いつもはちゃんと乾かす髪も、
今日はそのままにした。
だって雅紀が待ってるから。
出来る限り急いで戻ってみれば、
タオルケットに包まれて、何かを抱きしめて
ラグに丸まる雅紀の姿。
「…ふふ、和…。」
そーっと後ろから近づいてみれば、
俺のいつも着ているパーカーと、
スマホで俺の写真を見ながら、
ぎゅっと抱きしめてる雅紀の姿。
「格好いいなぁ、和。」
「本物がこっちにいるんだけど?」
「ふぁ!?」
慌てた様子で俺を見て、目を丸くしてる。
これ以上、可愛いことしないでよ…。