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第8章 Happy Birthday AN×O
ちゃんと掴まっててね。
そんな声が聞こえた、かと思ったら
何か反応をする前に
体がふわっと浮くような感覚。
「へ?へ?へ?」
バタバタと慌てるもんだから、
「わっ!ちゃんと掴んでてってば!」
「や、いや。雅紀ってやっぱりバカだね。
智、布団に包まれてんのに
どうやってお前に抱きつくんだよ。」
「あ、そっか。ごめんね、智。
じゃあ俺がその分ぎゅーってするね。」
その直後に、バシッという音が聞こえて
雅紀のうめき声が聞こえた。
大方、和也が今の状況に嫉妬して
蹴飛ばしたってとこかな。
…ヤキモチ焼きだなぁ、アイツは。
ま、雅紀もだけど。
でもって、俺もなんだけどね。
上下の心地よい揺れを感じながら、
でも不安でいっぱいという難しい心境の中、
聞こえてくるのは雅紀の鼻歌。
しばらくそうしていて、
「よし。着いた。
はい、布団取った取ったー。」
シュルシュルと纏っていた布団が
体から離される。
目に飛び込んできたのは、
綺麗に飾られた部屋。
「せーのっ。」
「「お誕生日おめでとう!」」
「…あ。」
そこでやっと気がつく。
時計を見てみれば、12時を少し回ったとこ。
11月26日、俺の誕生日だ。