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第8章 Happy Birthday AN×O





「やっぱり忘れてたんだ。」
「そんなこったろうとは思ってましたけど。」


真正面に見える壁には、

《HAPPY BIRTHDAY SATOSHI》

いつか番組で見たことがある
メルヘンな風船が部屋に何個も浮いていて、
花束なんかもあって。


こんな歳になったって、いくつになったって
やっぱりこうして祝って貰うのは嬉しい。

しかも、恋人たちに。


「…ありがとう。」
「ふふ、どういたしまして。」
「じゃあ、飲みますか。」

いいお酒を用意してますよ、雅紀が。

そう言って和也が伸ばす手に
吸い寄せられるように、自分の手を重ねる。


ダイニングテーブルも、綺麗に飾られてた。

真ん中にはアロマキャンドルの淡い光が、
3つのグラスを優しく照らしていた。


「じゃあ、智の誕生日に。」
「36歳になる節目に。」
「「「乾杯。」」」


チンっと、耳に心地いい音が重なって、
耳にまで届く。

幸せな音だった。


「もう俺も歳だなぁ…。」
「何言ってんの。」
「だって36だよ?アラフォーだよ。」
「でも可愛いからいいじゃん。」
「テキトーなこと言うなよ。」
「えー?本当だよ?」


まぁ今日は飲んでと、乗せられるままに飲んで
気が付いた頃にはすっかり酔っ払った。


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