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第11章 恋は戦場 S vs N × A





「いっつも唐揚げ食ってるな。」
「え?ああ。

好きなんですよ。二宮も。」
「へ?」
「唐揚げですよ?」


一瞬ドキリとした。

二宮、という言葉がまさかここで
出てくるとは思っていなかった。


でもすぐに、

「あ、時間時間!
櫻井さん!ほら急いで!」
「え、あ、やばっ!」


タイムアップで、それ以上は聞けなかった。

まさか…なぁ。

少しだけモヤモヤした気持ちが残った。



会社に戻ると、二宮が死にそうな
顔をしていた。


「おい、顔色悪いぞ。」
「…大丈夫、です。」
「大丈夫って顔じゃない。

もう今日は上がれ。な?」
「あと30分で定時じゃないですか、
それまでは帰りません。」
「あーー、もう。

じゃあそこで横になっとけ。
帰りは俺と帰るぞ。」


何か言いたそうな二宮を立たせると、
休憩スペースにあるソファーに寝かせた。


「とにかく、ジッとしてろよ。」
「…はい。」
「この毛布、使っとけ。ほら。」


上から掛けてやると、小さく
ありがとうございます、と呟く。

顔色の悪い二宮を気にしつつ、
とにかく仕事に打ち込んだ。


プロジェクトを受け持ってから、定時に
帰る事なんてしなかったけど、今日だけは
仕方がない。

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