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第10章 忘れていた『約束』《倉田side》

全く…何だって言うんだろう?

助手席に深く背を預けながら、運転手の横顔を眺める。

真剣な顔。

仕事の時でもまれにしか見せないその表情に、思わず目を細めた。

普段運転なんかしないのに、わざわざレンタカー借りてまで行きたい場所って何処なんだ?

東海北陸道…って事は、郡上、飛騨…富山?福井?

この人の実家じゃない事は確かだな。

正直、残業続きで頭の回りが悪い。

こんな時にそんな場所に行くのは勘弁して欲しい。

内心ほっとして…車の振動に体を預けていると、つい眠ってしまいそうになる。

『何なら寝ててもいいよ?』

そう言われたけど…

久々に、休日一緒に過ごせるのに、眠るなんて勿体無い気がする。

それに…

正面を見ているフリをして、隣の人を見る。

こういうのも、たまにはアリかな。

真剣な顔して…でもすごく無防備で。

面白くて可愛い。

こんな姿が眺められるのに寝てるなんて、それこそ勿体無いだろ?

口元に浮かんだ笑みを、頬杖で隠した。

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