
言いなりなんてっ
第1章 交渉
「は……」
わたしのまさかのカミングアウトに、ポカンとする成瀬。
「は、初めてだから……やり方とか分かんないし
怖いの…っ」
だから無理と言うと、成瀬が「莉子先輩」と、わたしの名前を呼んだ。
諦めてくれたかな…と思い、成瀬を見上げた。
「優しくするんで大丈夫ですよ」
にこっと笑う成瀬。
はい、全然伝わってなーい
ダメだこいつ……
どんなに頼んでも、何を言っても、成瀬は止めないんだと悟った。
平穏な大学生活を守るためだ、よし。
腹をくくるんだ宮下 莉子。
自分で自分を励ました。
「先輩、いいでしょ?」
再び確認してきた成瀬に、わたしはコクンと頷いた。
