
ビタミン剤
第7章 人魚のナミダ
「俺も強引なとこあるし、けっこう
仕切りたがり屋で決めたがり屋でしょ。」
「翔さん…。」
去年のあの夜
俺が拳で壁に殴りかかって
怪我して、ケンカ別れをしたあの日。
「俺ね、去年のあの夜
潤に渡したいものがあったんだ。
正確にはあの夜に買ってあって
俺の誕生日に潤に渡そうって思ってた。」
俺をソファーに座らせて
翔さんが書斎に取りに行って
手にしてたのはリボンのついた
小さい小箱。
「開けてみていいよ、潤。」
おそろいの指輪と部屋の鍵。
「これ
もしかして…俺とペア?」
「そ、俺もすっかり指輪とかの
アクセサリー系は付けなくなってるし。
やっぱセンス悪い?
一応、松潤好みで選んだつもり
だったんだけど。」
「実は今年の俺の誕生日に
潤にプロポーズするって決めてた。
だから別れようって言われた時は
さすがにむちゃくちゃへこんだ。
だけど、
潤はけっこう頑固だし、
1度決めたら意思固いからさ。
潤がそのほうが幸せになるならって
自分に言い聞かせて、
きっぱりあきらめたつもりだった。」
眉を寄せてる翔さんの顔はほんとに
辛そうな表示をつくってみせて
自分がどれだけ深く傷つけてたのかを
思い知らせれる。
