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ビタミン剤

第13章 ぼくのペット



翔さんが仔犬にみせる優しさ

別に一人ぼっちに放り出されたわけでもなくて置いてけぼりにされたとかでもなく、単に風呂に行っただけ。

なのに、こんなにも取り残されたって切ない気持ちが占有してきてる。


あんなに楽しみだったのに
ようやく念願が叶ったはずなのに


心待ちにしてたペットのいる暮らし



なぜだかひどく重苦しい
まだほんのちいさな守るべき対象が俺の膝の上で安眠してる、時折ピクリと身体を反応させながら
安心してぐっすりと眠りについてる仔犬。


これから毎日、毎晩

翔さんにじゃれついて
翔さんと触れ合って
翔さんが抱き上げて


もしかしたら俺たちの2人だけで過ごせる時間が
こいつのせいで今よりもっと減ってしまう?


いやだ
そんなの…絶対やだ

じゃあ、もっと懐かれるのように
俺がもっと頑張ればいいだけ

想像してた感覚と実際の感覚とのギャップが
どうにも開き過ぎてて
今だって、
翔さんが脱ぎ捨てたシャツでカイザーの身体を
くるんであげることにさえ抵抗を感じてる。


手にしたシャツに顔をうずめると、翔さんの
残り香が鼻腔いっぱいに広がってくる。


風呂場で洗い流した筈の熱量が込み上げてきてしまいそうになる
適度な酔いも回ってきててどうにも思考がまとまらなくなってきてた。


翔さん…やだよ

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