
ビタミン剤
第4章 こんなの、はじめて
恐る恐る伸ばした右手をギュっと
強めに握ってくれる翔ちゃん。
しばらくしてから、手が開いて
今度は指と指をしっかり絡ませて
握って、恋人繋ぎをしてくれた。
俺たち2人とも汗っかきだから
手のひらがしっとりとしてきてる。
「コンビニ寄るけど
雅紀は何時ものでいい?」
「あ、…うん。」
「待っててね、
ダッシュで買ってくるから。」
優しい微笑み。
やっと翔ちゃんが目を合わせて
くれたから、安心してつい涙が溢れてきた。
「ああ、もう泣かないでよ。
雅紀の泣き顔の破壊力はさぁ
ハンパないんだから。」
抱き寄せてギュっとハグして
くれてから扉を開けて買い物へ
急ぎ足で向かってゆく。
ジャケットの袖口で涙を
拭いながら翔ちゃんの怒ってた
理由を考えてみたけど
やっぱりわかんなくって。
「お待たせ
お、ちゃんと泣き止んだね。」
「うん。」
翔ちゃんのやさしい口調と
笑顔に少し戸惑ったけど
でも、嬉しくって頬が緩んだ。
「はーい口開けようね。
雅紀、あーんして。」
「ふえ?」
放り込まれたのは
甘いチョコでコーティングされた
一口サイズのアイス。
口いっぱいに広がる冷たさと甘さ。
「美味しい?」
「ん、うん。」
アイスの箱を俺の膝の上に置いて
くれて、買い物した荷物の袋は
後部座席に置いた。
「じゃあ帰ろうね。」
エンジン音がさっきとはまるで違う、
聞きなれた翔ちゃんの運転する音。
膝の上にそっと左手を置いて
温もりを伝えてくれてる。
