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ビタミン剤

第15章 陽だまりの午後




今が1番しあわせだよ

翔ちゃんに求められて夜毎に果てるほど愛されて
その腕の中で意識を手放したりできてるんだもん。
目覚めた時の気怠さや鈍い痛みよりもっと満ち足りた気持ちになれて、いまもこうして翔ちゃんのかわいい寝顔を眺めていられる。


こんなにも穏やかな日々を
長い時間を共にしていられるのは
悠久の時が過ぎてきた中でほぼ無かったかもしれない

追っ手に追われながら
あるときは心中紛いの逃亡
不治の病に罹った深窓の令嬢と
往診してくれる医師
俺たちは何時もどの時代でも急かされるように出逢いと別れを繰り返してきた


…う…ん…か、ずぅ…



翔ちゃんの右腕が俺を捜して彷徨ってる。


まだ夜明け前

目を覚まさないように、そっとその右腕に軀をあずける。翔ちゃんのあたたかな胸の中で目を閉じて過去の記憶を紡ぐ夢を見ないように
今はただこのぬくもりに抱かれて眠りたい。








前髪をくすぐる優しい指先の動きで目覚めた

逞しい素裸に吸い寄せられそうになるけど、そこは我慢 。差し込む陽光できらきら輝く薬指のリングは翔ちゃんが贈ってくれた永遠の印


翔ちゃんのやさしい微笑みで目覚めて、めいっぱい愛が伝わるようにぎゅっと抱きしめてくれる。




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