
ビタミン剤
第15章 陽だまりの午後
ねだったおはようのキス
携帯の着信音に邪魔されたのはすこし残念だけど
舞ちゃんからの電話なら仕方がないよね。
しぶしぶ腰をあげて重い足取りで実家へ向かう準備をする翔ちゃんの頬にチュッとしてあげるとすっごくよろこんでくれる
ホントにかわいい
そんなことしたらほら、まただよ
今日は一日中この指輪を外さないでいようねって
翔ちゃんがそう言ってくれた。
この部屋の中だけで充分ですって確かに聞き分けの良いことは言ったけど、
俺だって本音を言えばいつもいつでも嵌めておきたい
でも、立場とか性別、のし掛かる課題は多いし、マスコミ関係の詮索やらも面倒くさいし、
世間的にも言及されたりされるのも正直困るしね。
ぎゅっと繋いでくれる翔ちゃんの右手が愛おしい
お出かけのキスはわざとおおげさに音を立ててしてみたよ。だってこうでもしないと本心がバレたら大変だしね。
俺だってめちゃめちゃ愛してますよ
離れたくないのは同じだからね
玄関の扉のドアノブをまわすギリギリまで翔ちゃんの指先が名残惜しそうに繋いでてくれた。
たとえどんな運命が引き裂こうとしても
かたく結びつくこの紅い糸の絆は離さない。
