
ビタミン剤
第15章 陽だまりの午後
そんなに笑顔むけないで
そんなに楽しそうにしないで
そんなに海くんを見つめないで
翔ちゃんは俺だけのものなんだから
煮込んでるうどんのお鍋の火加減を見つめながら、自分の中に芽生え始めようしてる
この負の感情をガスの炎で燃やしてしまえたらいいのにって願ってた。
そんな邪で負の感情を覚えながら出来上がった煮込みうどん。結局、翔ちゃんは食べてくれなくて蓋をして置いたまんま。
嫉妬の業火で仕上げたものだったから食べてくれないことが少し安心しちゃったりね。
海くんに向かって満面の笑みを貼り付けて
ふうふうしながら、せめてもの罪滅ぼしでやさしくやさしく食べさせてあげる。
翔ちゃんが俺を見てくる
じりじりじりじり焦げ付く燃えるような視線
もっと俺だけを映して
俺だけをその瞳に焼き付けて
それが俺の一番ほしいものなんだから
お腹が空いてるままだと翔ちゃんはますますご機嫌斜めになっちゃうから、空腹のままほったらかしにはできない。
炊飯器のごはんでおにぎりを作ってあげて翔ちゃんの口まで運んであげる。
「はい、どーぞ召し上がれ。」
いっつももらってばかりはダメだからね
おにぎりをほおばる翔ちゃんの笑顔はホントにかわいい。
もちろん海くんもかわいいけど
やっぱり俺の翔ちゃんにはかなわない。
おにぎりの半分こを口元へ運んであげたら俺の指先ごとパクッと食い付いてきてくれる。
「ひやぁ!もう翔ちゃん。さっさと食べて。」
わざとらしくなってないよね
2人で過ごせる貴重な休日
仲良く戯れ合うのは俺だけにしてほしいんだもん。
