
ビタミン剤
第4章 こんなの、はじめて
「楽しい?
気持ちよかった?
見てるこっちは
はああああああ!!!
だったし。
銭湯ロケは百歩譲ったとして
洗い場、湯船までカメラを
入らせるわ。
なにあれ?
あんな雅紀のセクシーな身体を
全国ネットで垂れ流してんの
俺が怒んないわけないでしょ。」
「ちが…だって、あれは。
上半身しか、んぁ…ぅぁあ
撮影してませんよって
言われてたから。
風間に聞いてみたらわかるから。」
「なーに、俺に
後輩の風間に訊けってこと?
そんなみっともない
真似しろってこと?
かわいい俺の雅紀の裸を全部
撮影されて、腹立てて嫉妬して
悔しいんですぅーって。」
翔ちゃんの低音ボイスは
耳朶に触れるように囁いて
くるから、
両方の目尻から涙が滲んできた。
「…ぁん…ぅ…翔ちゃん…
ごめん、なさ…い。」
「俺ね、けっこう嫉妬深いし
独占欲もめちゃめちゃ強いの。
けどさ、
雅紀に嫌われたくないし。
だから、あんまり雅紀を束縛
しないように、
紳士なふりしてたけど
今夜のはさすがに理性もなにも
かもブチ切れだよ。
大事な恋人がさ、全裸をさ、
カメラの前であんな風に簡単に
見せちゃうってさ。
雅紀ってもしかして
俺のこと好きじゃないの?」
「ちっちが、翔ちゃん…。」
ズキンと胸が痛くなる。
実は翔ちゃんとのこの恋は
もしかしたら、
俺は翔ちゃんにとってセカンド
なのかなって内心思ってたんだ。
だって翔ちゃんは優しいけど
毎日一緒にいたいとかも
言われたことないし、
俺を束縛したりもしない。
翔ちゃんはカッコ良くて
頭も良くて、俺なんかと釣り合いが
取れてるなんて思ってもいなくて。
わがまま言って嫌われたくもなくて。
