
ビタミン剤
第16章 千夜一夜物語
翌日
「ニノ、今夜ちょっと飲みに行かねえ?」
雑誌の撮影と取材後、奢りだったらいいですよって軽口で受け応えするニノを付き合わせて飲みに出かける。
酒にはあんまり強くないニノだから、乾杯して早々に昨日起きた出来事をぜんぶ話した。
「そうですか、相葉さん
へぇ、ついに告白しちゃったんですか。」
「もしかして、知ってたのかよ。」
「いえ、まあなんとくですよ
あれだけ、わかりやすい態度してるとね
もうずっと何年も翔ちゃんのこと熱心に見てましたからね。」
マジかよ
鈍い鈍いにとは言われてたし
自覚もしてたけど
まさかこんな近くにいて気が付かなかった。
「よりによってメンバーの俺に恋愛感情かよ
しっかし、よくわかんねぇ。」
「まあ、その気がないなら
きっぱり突き放してあげたほうが良いんじゃないですか。」
その気…ねぇ
元気いっぱいでなつっこいやわらかな笑顔は相葉雅紀のトレードマーク。
なのに今思い出せるのは
別れ際の真っ赤に腫らした目と涙でぐしゃぐしゃに濡れた頬に生気を失った瞳の色
あんな顔にさせたのは紛れもなく俺自身。
ロケ先の海外で俺のこと好きだった気持ちをきっぱり捨て去って帰ってきたら
またいつものあのトレードマークの満面の笑みを見せてくれるんだろうか?
もしまた、無理に引き攣った笑顔を見せられたりしたら
俺は…
頭ん中が混乱して正直考えを出しあぐねていた。
