
ビタミン剤
第16章 千夜一夜物語
風呂場に行き、バスタブにごく温めの
湯貼りをしてやって浴槽の半分くらいにたまった頃合いで入浴するように声をかける。
ぼんやりした様子でその場で洋服を脱ぎ捨てて全裸になる雅紀。
素っ裸のまま立ち尽くして、もう一度確認するかのように俺の名前を呼ぶ。
「ホントにホントに本物の翔ちゃん?」
っつうか、いくら状況が飲み込めないっても
片想いの相手目の前にして全裸になるって。せめて前くらい隠せよ!
手をつよく握って風呂場へ連れてって
勢いよく水のレバーを全開にして頭から雅紀にシャワー浴びせてやる。
「ひゃぁ、冷たッッ!!やっぱり翔ちゃんだ!
なんで、なんでここ海外だよ?
こんな遠くまで?…なんで?」
「だからまだ、ちゃんと返事してねえだろ。」
「返事って、だって…あれは
俺の…単なる、片想いで…だから…」
「ゆっくり風呂に浸かって意識戻してこいよ
話しはまたあとでな。」
そう言って浴室のドアを閉めた。
