
ビタミン剤
第16章 千夜一夜物語
Aside
「ホントに翔ちゃん?…夢…じゃない…の?」
夢の中の翔ちゃんがはっきりとした
口調で話しかけてくれる。
「雅紀に逢いに来た
ちゃんと返事してないからな。」
逢いにって…誰に?
返事って…なんの?
はっきり聞こえる言葉
なのにぼんやりしてる頭の中だとうまく処理しきれない
あ、お風呂入るんだ、
そうだ…服、脱がなきゃ
脱いだ服をベッドの上に置いて、まだ状況がよくわかんなくて素っ裸のまんまで立ち尽くしてると
翔ちゃんが俺の手を掴んで引っ張ってくれた。
勢いよく冷たいシャワーを浴びせられて
うすぼんやりしてた意識がようやく戻ってきた。
待ってよ、ここ、海外じゃんっ!
てか、わざわざ俺に逢いに来たの?
まさか、
他の仕事の合間に?
ンなわけ無くって
もしかしたらニュースの取材?
ううん、そんな仕事言ってなかったよね
聞きたいこと尋ねたいことが湧いて出てきて頭の中がまとまんない。
「ゆっくり風呂に浸かって意識戻してこいよ
話はそのあとでな。」
優しくそう言って扉を閉めてくれた。
どっちにしたって翔ちゃんを待たせてることにかわりないやっ、急いで出なきゃ!
もう一度冷たい水のシャワーを浴びてから
風呂場を飛び出して、トランクスだけはいたまま、翔ちゃんのところへと急いだ。
