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ビタミン剤

第16章 千夜一夜物語

Sside


風呂場からドタバタ騒がしい音がする。
雅紀がパンイチ姿で浴室から飛び出てきた。
洗いざらしの髪から雫がぽたぽた落ちてる
大きく見開いた眸が俺のことを凝視して不安そう
に揺れている。



「翔ちゃん、どして、あの返事って?」

「これ雅紀に。ほら手、出して。」


ポケットから取り出して雅紀の掌に乗せてやる。
ちいさな石の結晶をコロンと一つを転がせた。


「砂漠の花、デザートローズって言って
想いの化石って石だよ。
願いを叶える石とも言われてる。
本物のバラは日本に帰ってから渡すからさ。」

「ごめん、これって?
どういう意味?俺バカだから…」


確かに意味不明だろうな。
ずっと以前チェニジアを旅したときの砂漠で見つけた結晶。おまもりって事じゃないけどいつも鞄に入れて持ち歩いてた。


「雅紀は馬鹿じゃねえよ
まあ、けっこう無知な方だとは思うけどさ。
ホントの馬鹿なら嵐の仲間として
今まで一緒に居たり出来ねぇだろ。
相葉雅紀は誰より努力は惜しまない根性と優しい気遣いのできる奴だよ。」

「翔ちゃん…褒められてんだよね?」

「別れ際のあんな泣き顔は見るの嫌なんだ。
日本に帰って来て、雅紀が辛そうに泣くのを我慢して引き攣った笑顔なんか見るのはもっとイヤだと思ったよ、だからここまで来た。」


「えっ?…ごめん、…よくわかんない」


やっぱこういうの苦手だわ。
まどろっこしく言っても伝わる相手じゃねえんだよな。腹決めて直接的に言ってやんねえとな。

「俺ら付き合ってみよ。
俺も雅紀のこと好きになりたい
泣き顔じゃなくて雅紀の最高の笑顔が見たい。
男同士で恋愛とか、わかんねえことだらけだけど
やってみなきゃわっかんねぇし。
挑戦もせずにあきらめるとか勿体無いだろ?」


あの日2人で一緒に過ごした時間は
間違いなくあたたかくて、最高に楽しくって。
時間が過ぎるのも忘れてたし、たぶん雅紀が一緒なら笑って過ごせる日が増えると思えたから。


大切な仲間から
もう1段階ちがった意味で雅紀を知りたいし、もっともっと好きになりたい。
これが俺自身が散々悩んで出した結論だった。

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