
ビタミン剤
第25章 a mole tunnel
「じゃあ、これって
もしかして、カモフラージュの意味で?」
「当たり前だわ。
こんなキツい銘柄なんて吸わねえよ。
寿命縮めたくねぇし。」
「…俺の、為に?」
「バカかぁ?自惚れんなよっ。
潤に疑いを持たせたらマズいだろうが
おまえらは親友だろ?
だったらとことん仲良しの親友でいろ!」
「…だよね…
うん、潤は大切な親友だもん。」
タバコの紫煙が情事後の
2人を包み込むように車内に充満していく。
助手席のサイドガラスに写りこむのは運転する
翔くんの姿
絶対に俺のものにはならない
どんなに求めても望んでも叶わない戀心
潤の身代わりだって、代役だって
なんだって務めるから
どんな姑息な手段をつかっても
翔くん、貴方と繋がってていたい。
「潤に、LINE送れよ。
そろそろ着く頃だって。」
「…うん。わかった」
たとえこれが裏切る行為だったとしても
俺はこの哀しくてマヌケなモグラの道化を
巧みに演じきってみせるよ。
俺の1番の親友は松本潤
だから翔くん、
これからも俺のこと便利に使ってね
そっとガラス越しの翔くんに祈りを込めた。
