
ビタミン剤
第37章 サンクチュアリィ
Sside
森の中を2時間近くは歩き続けてたと思う。
道しるべもなにもない深い森を
准一くんの背中だけを見つめて歩き続けた。
緑の鮮やかさや染み渡る空気や深緑の香りよりも、准一くんのことだけを考えてた。
まるで通い慣れた都会の道を歩いてくような
かろやかな足取り。
距離が開いて置いてかれるみたいな不安に駆られて小走りするとつまづきそうになった。
「大丈夫か?」
振り返って微笑みながら手を差し伸べてくれた。
きつく握ってくれる手のぬくもりは
あの頃と変わらない温かさ。
ねぇ、俺は貴方に追い付いたんだよね?
貴方の隣でこうして歩いててもいいんだよね?
突然の別れ
なにもかが色褪せそうになって
なにも信じられなくなりそうだった
あの頃の自分を思い出してしまう。
立ち止まって蹲ってたあの頃の自分
たくさんの人が優しさを惜しげも無く言葉に
してくれた。
あいつのこと信じてやってくれよな
ガキだけどおまえのことは本気だから
だから、今の自分じゃ足りねえもんばっかで
おまえを受け止め切れねぇって
そう言ってたよ
あのさ、岡田って
ストイック過ぎなんだよね
不器用だし、でもさ信念を貫く強さは
誰より強いからさ
あいつのこと待っててやってくんね?
岡田っちにはおいらから言っといてやる
大丈夫ですって岡田氏は必ず迎えにきますよ
