テキストサイズ

きみがすき

第11章 *ジュウ*



******************


記憶は急速に遡る



あれは確か、俺が小学5年生だったかな
俺の家はちょうど隣の学区とぶつかる辺りに在って、そう、どっちの学校に行くにしても、めちゃくちゃ遠いってやつ。
だから友達と帰っても最後は俺一人になんの。

その日は雨で、空色の傘をさしてたんだ。
近道に使ってた公園には、俺と同じ位の男の子が3人、低学年っぽい小さい男の子が1人居てさ、見たこと無い顔だったから隣の学校かなって特に気にして無かったんだけど…
『生意気なんだよ』
『謝れよ』
とか雨音の合間に一方的に小さい男の子に言ってるのが聞こえてきた。

1人相手になにやってんだよって思ったけど、助ける勇気なんて無くて。事情も分からないしさ。
どうしようって思ってるうちに、3人の1人がヒートアップしてきて、今にも殴りかかりそうになったの。でもね、

「やめろよ!!」
って言ってくれた人がいたんだ。


凄く大きな声だったから、殴りかかった手も止まって、あぁ良かった。って思ってたら、4人とも俺の方見てんの。

『やめろよ』って言ったの俺だったみたい(笑)

その後は…あんまり覚えて無いんだけど、最後には小さい男の子と、泥だらけで笑い合ってたのは覚えてる。
…あ、でも傘どうしたんだっけ?気に入ってたんだけどな。


まぁ、何が言いたいかって言うと、俺、時々自分の意思とは関係なしに体が動いちゃう時があるんだよね。や、酔ってる時は別でね(汗)。

昔なんかのテレビ番組で、勝手に手が動いちゃう人ってのをやってて、その人の手を《devil's hand》“悪魔の手”って言うんだって。
じゃぁ俺の口は“悪魔の口”なのかって当時は本気で心配したなー。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ