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きみがすき

第16章 *ジュウゴ*

*櫻井*




「智くん。」
目的の人物を見つけ声をかける。

大「え?…翔くん!どうしたの?!」
居るはずがない俺に驚きつつ、笑顔で駆け寄ってくる。

「や、最近智くんに会ってなかったから、顔見たいなって。」


大「なにそれ、気持ち悪~い(笑)」


「ひっで!(笑)」


大「ふふ。仕事?」


「そ、こっちまで来る用事があったから、ついでに挨拶がてら寄っただけ。智くんの会社にはお世話になってるしね。」
ほんとは嘘だけど。

「俺、今日はこのまま直帰なんだけど、智くん定時に上がれる?ひさびさ飲もうぜ?」


大「あ…最近ちょっと忙しくて。」


「今日やらなきゃなんない仕事?
いいじゃん今日くらい。ほら、俺下で待ってるから、定時で終わらして来てね。じゃ、また後で。」
かなり強引に話を進めて、智くんの返事も聞かずに出入口へと向かう。

大「え、ちょっと翔くん!」

出ていく寸前、離れた所にいた二宮くんと目が合う。
少しだけ笑ってオフィスを後にした。




二宮くんから連絡があったのは先週。

『大野さんの、話を聞いてあげてください。』

二宮くんから連絡があったのは初めて。
3人で飲みに行った日に何となく交換した連絡先。

しかも深夜。何事かと思ったよ。

詳しく内容を聞こうにも『勝手には言えない』と頼ってきたにしては強情で、ただ智くんが元気がないと。

ま、そんな流れで今日になるわけだが


はぁ…確かにねぇ…

何あれ。

痩せてるわ、顔色悪いわ、なのにへらへら笑ってるわ。そんなんで良く遅くまで仕事してんな。

てか誰か止めろよ。ブラックかここは。

まぁ止めてもやるだろうね頑固だから。

人の体はしつこいくらいに「健康第一」だの「健診行ったのか」だの、お袋かってくらい言ってくるくせに。
自分のこととなると、てんで無頓着。
そしてスイッチが入ったかのように周りが見えなくなるんだから。

ったく、何やってんの智くん。


二宮くんも、どうにかしようとしてくれたんだろうね。気まずそうなのは、他に頼ざるおえないことが悔しいのか。…んなガキじゃねぇか。

じゃぁ…原因が俺にとっては好ましくない内容だと思ったか。二宮くんの事だから、俺が智くんに好意を持ってたことくらい気がつているだろうしね。

ま、本人に聞けばわかることだ。

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