きみがすき
第16章 *ジュウゴ*
まぁこの年齢の男に可愛いってのも変だけど…
「こんなに食べらんない。」と言って、勝手に俺の茶碗にご飯を入れる智くんを改めて良く見る。
てか俺のしょうが焼き定食は特盛だ。
なんだろ、仕草?言葉遣い?ってのもあるだろうけど…
やっぱ雰囲気が変わったのか。
となると…
「智くん。」
大「んー?」
もぐもぐと少しずつではあるが、しょうが焼きを食っている。
「すきな奴、できた?」
大「、いきなり?」
あ、あからさまに泳いだ目。ちょっとむせそうになったし。
当たりかぁ
へぇ。あの智くんが人をすきになるって、赤飯ものじゃね?
やっべ、楽しくなってきた。
「ねぇねぇどんな子?」
大「えー…どんなって…う~ん…」
…ん?でもさ、
女は恋をして綺麗になったり可愛くなるって聞くけど…、男の智くんが可愛くなるって…
相手はよっぽど男勝りな子なのか?
大「えっと、明るくて…優しくて…
暗い夜道をね、明るく照してくれるような、そんな風に笑う人。かな。」
「へぇ…」
その相手を思い出すかの様に、ゆっくりと大切に言葉をつなぐ。
「?…どうした?」
そう声をかけたのは、智くんが俺を見つめるから。
大「…あのね…俺がすきになったのは、男なんだ。」
…なんですと?
大「あ、や、別に翔くんに隠すつもりはなかったよ。すきだって気が付いたの最近だし、翔くんに会えてなかったし。
あ、だからって翔くんと連絡とらないようにしてた訳でもなくて、仕事も忙しかったし~…」
めちゃくちゃ喋るな。
あっそう、つまり…
「俺に気を使ったわけね。」
大「ち、違うよ!」
「違うの?」
大「…………違くない。」
はぁ…
「智くん、俺言ったよね。智くんのことは、もう何とも思ってないってさ。」
大「…うん。ごめん。」
しゅんとして俯く智くん。
もぉ。まぁまさか男をすきになるなんて思ってなかったし、気を使いたくなる気持ちもわからんではないが。
「ほら、顔あげて。すきな人できて良かったじゃん。だったら尚更ちゃんと飯食わなきゃ。な?」
大「でも振られちゃって…」
…なんですと?
大「…俺のこと、そういう対象では見れないって。」
「…」
あぁ、そう言うことか。