きみがすき
第19章 *ジュウハチ*
結局、夕方になっても雨はやまなくて。少し風は和らいだけど、時折自己主張するように雨を窓に打ち付けている。
ニノは、宣言通り定時で退社して行った。
今日、相葉ちゃんに会うことは言っておいた方が良いのか、事後報告で良いのか悩んだあげく、帰り支度を済ませたニノに「今日、相葉ちゃんと会うよ。」と伝えた。
すでに出入り口に足を向けていたニノは、その瞳を一瞬だけ大きくして、でも「そっか、良かったね。」と優しく笑ってくれた。
「…よし。おわり。」
パチンとパソコンの電源を落とした。
*
「ごめん!遅くなっちゃった!」
相「ううん!それより早く入って!」
水溜まりを避けながら駆け寄り、乗り込んだ車。当たり前だけど中には相葉ちゃんが居て
「ごめんね。待った?」
相「全然。こっちこそ雨の中走らせちゃったね。」
はい。とふわりと頭にかけられた、ふわふわのタオル。
そのタオル越しに見える
あぁ…相葉ちゃんだ。
やっと会えた…。
「…ありがとう。」
そう言うと、いいえ。と目を細めて笑ってくれる。
ん?
…あれ?
でもなんだろ…違和感が
相「どうしたの?」
じっと見つめる俺を不審に思ったのか、相葉ちゃんが俺の顔を覗きこむ。
ふわっと動いた空気。
あ…わかった。
「匂い…」
相「え?」
「香水変えたの?」
相「え…あ……よく、わかったね。」
「やっぱり!わかるよー。」
そうだそうだ。匂いが違ったから変な感じがしたんだ。
マフラーに少しだけ付いてた匂い。相葉ちゃんの家で嗅いだ匂い。2人で遊んだ時に嗅いだ匂い。
相葉ちゃんが、すきな香りなんだなって思ってたから、忘れるわけないもん。
「こっちの方が相葉ちゃんらしいね。」
相「え…?」
「前のもいい匂いだったけど、なんか相葉ちゃんぽく無いなぁって。」
この香り、相葉ちゃんに優しく包み込まれてるみたい。…って変人かな俺。
相「…」
? 反応がない相葉ちゃん。
横を見ると、じっと俺を見る瞳とぶつかった。
…あ
「ごめん!俺、相葉ちゃんぽいとか、偉そうに!あの、前の香水を悪く言ってる訳じゃなくてっ…あの、なんて言うか、只こっちの方がすきな匂いってだけで……」
あぁ!自分でもわけわかんない…!
相「くふふ…」
え?
相「ふふっあはは!」
な、なに?!