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きみがすき

第19章 *ジュウハチ*



結局、夕方になっても雨はやまなくて。少し風は和らいだけど、時折自己主張するように雨を窓に打ち付けている。


ニノは、宣言通り定時で退社して行った。

今日、相葉ちゃんに会うことは言っておいた方が良いのか、事後報告で良いのか悩んだあげく、帰り支度を済ませたニノに「今日、相葉ちゃんと会うよ。」と伝えた。

すでに出入り口に足を向けていたニノは、その瞳を一瞬だけ大きくして、でも「そっか、良かったね。」と優しく笑ってくれた。


「…よし。おわり。」

パチンとパソコンの電源を落とした。





「ごめん!遅くなっちゃった!」


相「ううん!それより早く入って!」

水溜まりを避けながら駆け寄り、乗り込んだ車。当たり前だけど中には相葉ちゃんが居て

「ごめんね。待った?」


相「全然。こっちこそ雨の中走らせちゃったね。」
はい。とふわりと頭にかけられた、ふわふわのタオル。
そのタオル越しに見える

あぁ…相葉ちゃんだ。
やっと会えた…。

「…ありがとう。」
そう言うと、いいえ。と目を細めて笑ってくれる。

ん?

…あれ?

でもなんだろ…違和感が

相「どうしたの?」
じっと見つめる俺を不審に思ったのか、相葉ちゃんが俺の顔を覗きこむ。

ふわっと動いた空気。

あ…わかった。

「匂い…」


相「え?」


「香水変えたの?」


相「え…あ……よく、わかったね。」


「やっぱり!わかるよー。」
そうだそうだ。匂いが違ったから変な感じがしたんだ。

マフラーに少しだけ付いてた匂い。相葉ちゃんの家で嗅いだ匂い。2人で遊んだ時に嗅いだ匂い。
相葉ちゃんが、すきな香りなんだなって思ってたから、忘れるわけないもん。

「こっちの方が相葉ちゃんらしいね。」


相「え…?」


「前のもいい匂いだったけど、なんか相葉ちゃんぽく無いなぁって。」
この香り、相葉ちゃんに優しく包み込まれてるみたい。…って変人かな俺。

相「…」

? 反応がない相葉ちゃん。
横を見ると、じっと俺を見る瞳とぶつかった。

…あ

「ごめん!俺、相葉ちゃんぽいとか、偉そうに!あの、前の香水を悪く言ってる訳じゃなくてっ…あの、なんて言うか、只こっちの方がすきな匂いってだけで……」

あぁ!自分でもわけわかんない…!


相「くふふ…」

え?

相「ふふっあはは!」

な、なに?!

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