きみがすき
第19章 *ジュウハチ*
相「くくくっふ、ふふ。」
「…。」
運転席でいまだに笑っている相葉ちゃん。
もう、ハンドルに顔伏せちゃってるし。
…。
ので、俺はその様子をただ見てる。
相「ふふっはぁ……も、大ちゃんって…」
そう言いながら、やっとハンドルから顔をあげた。
その瞳には涙さえ浮かんでて…
「お、俺?」
そんな涙が出るほど面白いことを言った覚えは無い。てか面白いことは言ってない。
相「…あー…ううん。
俺もね。こっちの香りの方がすき。だなって。」
そして、微笑んで、ぽろりと一粒の涙が落ちた。
「…あ…そうなんだ。それは良かった。」
のか?…結局、なんであんなに笑ってたの?
溢れ落ちた涙を拭いながら、うん。と頷く相葉ちゃんを見てたら、なんだか聞くに聞けなくて…
でも…きっと、悪い意味は無いと思う。
だって、その顔は、なんだか強ばりが取れたような、すっきりしたような表情をしていて
そんでもって、俺を見てにっこり笑うんだもん。
そんなことされたら、俺…
期待。
しちゃうよ?
相葉ちゃんもって…
ねぇ…今日、返事くれるんだよね?
相「大ちゃん、お腹、空いてる?」
ふぅと呼吸を整え、いつもの口調に戻った相葉ちゃん。
「え?あ、お腹?…まだ、空いてないかな?」
相「なんで疑問形(笑)」
だってそれどころじゃないもん。
もう緊張で、足先から頭までいっぱいだよ。
相「…じゃぁ、さ。俺んちで良い?
もし途中でお腹空いても、何か作れるし…」
「え?家?なんで?」
てっきり車の中で話をするもんだと思ってて、家に招待されるなんて、まさかの展開で。
思わず心の声がそのまま出てしまった。
相「あ…や、雨強いしさ。風も強いし、何処かお店入るより、良いかなって思って…」
そんな、長くなる話なの?
俺のこと考えてくれるって言ってくれたけど…いったい俺はこれから何を言われるの…?
相「えと、もちろん無理ではないけど…」
お願いをするような、伺うように覗く瞳。
そりゃ相葉ちゃんの家だもん、嫌な訳ないじゃん。
でも、なんだかさっきの期待が萎んでいく。
「ううん。じゃぁお邪魔させてもらうね?」
なんとか少しだけ笑ってそう答えると
相葉ちゃんは、ほっとしたように笑って
じゃぁ出すね。って、ゆっくりと車のアクセルを踏んだ。